suspiria

兼ねてより楽しみにしていた映画「サスペリア」を観た。本作は1977年に公開された「サスペリア」のリメイク版として2019年に公開されたものだが、結論から言ってしまえば、リメイク版とは謳っているが全く別物の映画だった。

オリジナル版では舞台はあるバレエ団に主人公のスージーが入団するのだが、リメイク版では舞踊団に入団する。バレエは空手でいう「形」のように振付が決まっているものに対して、オリジナル版では「コンテンポラリーダンス」を採用していて、視覚でも全く異なるのだ。

今ではコンテンポラリーダンスは現代の日本に馴染んでいるが、はじまりはヨーロッパだった。映画の舞台はナチス時代のドイツ・ベルリン。またベルリンの壁が厚かった頃。本作では、オリジナル版にはなかった 3つの視点から物事が同時進行で動いていくのだが、なかなか一度見ただけでは難解で頭で処理できない。後々、調べてやっと理解できた内容もある(当時のドイツ情勢など)ので、日本人にはかなり難しい内容なのかもしれない。

個人的に注目したのは、トムヨークの映画音響や挿入曲である。

今回初めて映画音響を担当したということで、先行でトムヨークよりアルバム「Suspiria」が発売された。ジャケットビジュアルからは全くホラー要素が感じられないデザインで、ネオンピンクに鮮やかなブルーの配色に目がいく。日本では先行でアルバムが発売されたので、映画の情報の前よりもアルバムジャケットに注目が集まったようにも思う。(「サスペリア」のリメイク版ということである程度の想像や構想はできていたとしても)恐怖や緊迫感のような印象は受けにくく、正直一部のトムヨークファンがコレクトするために買う目的の方が多買ったんじゃないかなと思った。勿論私も、一ファンとして手に入れたが、メディアで頻繁に広告として流れていた1曲「suspiria」以外、映画が公開されない限りはただの「サントラ」に過ぎなかった。

ただ、物語を見進める前にサントラを聴きこんでいてよかったと思えたほど、より描写が美しく、想像力を掻き立てるものになったと思う。

ダンサーたちが一心不乱に踊る中、苦痛の叫びが響き渡る。「女性であることの恐怖」を「魔女」として喩えているのは当時の情勢にも深く関わってくる事で、1970年代に東西へ分断されたベルリンの世界を見ている。

私が個人的に好きだった曲は「Unmade」だ。美しいピアノの旋律に乗せて、トム・ヨークのささやくような繊細な歌い声が響き渡る一曲となっている。この曲が物語の終盤で流れるのだが、この瞬間の場内は本当に今でも鮮明に覚えていて、隣に座っている女性は泣いている、目の前に座っている女性は両手を合わせて拝んでいる、私はというと、あまりにも状況がすごすぎて、冗談抜きで開いた口が塞がらなかった。

“Unmade”とは”未完成”という意味であり、歌詞の中で何度も「なにかに」誓いを唱えている。この映画の最後の展開は「返還される」「還る」意味が強い。最後は母への忠誠を誓う最後の儀式へと進み、クライマックスにはオカルト映画らしく、謎に包まれて終わった。

今回、ホラー映画の音楽を製作する上で、トムヨークはRADIOHEADのギタリスト、ジョニー・グリーンウッドに嫉妬していたという。今回のサウンドトラックも、トムヨークらしいメロディックでコンテンポラリーな狂気に満ちたアルバムだった。


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