先日、ふと夜中4時過ぎに目が覚めた。
いつもと違った、少し荒々しい風の音が窓ガラスを揺する音を聞いて「ベルリンで過ごした冬がもう直ぐ終わろうとしている」と思うと、途端に寂しくなって胸が締め付けられそうになった。
この部屋で何時間も将来について考えたり、数え切れないくらい泣いた暗く長い冬が、辛くもあったけど同時にとても愛おしい時間だったんだなと気付く。それからは、まるで最愛の人との時間を一気に取り戻すかのように、意識的に夜一人で散歩をすることが増えた。思考が巡り、悩んでも答えが出ない、そんな苦しい夜が何日続いても、ベルリンで過ごした初めての冬を忘れたくはない。
きっと私の中で、最も美しく、酷い冬だった。
ベルリンの寒さは、人や風景の感情を露わにする。目を背けていた過去と正面から向き合わざるを得ず、素肌を冷えたナイフでなぞられるような恐怖を感じることもあれば、今まで以上に人の温かさに触れ、友人が作ったケーキを食べながら、もっと一緒にいたいなと恥ずかしげもなく言えたりすることだってある。
寒ければ寒いほど、人は人で暖を取ろうと寄り添う。そんな冬が、心から愛おしい。だから、終わってしまう冬を目の前に、寂しいとは言わずに、ただシンプルに愛と敬意を持って送り出したい。いつも凄い不器用だなと思うけど、自分らしく、そう思った。
少しずつ、街を歩く人たちの服装が軽装になっていくのを横目に、私も春を迎え入れる準備をしなければいけないね。