書けなくなっても

12月、ベルリンの息が凍るような寒さがとても好きだ。窓際に寄せたひとり掛けのソファに座って、対面の家に飾られた色鮮やかな電飾を見ていると、今年もこうしてドイツの冬を迎えられることが細やかながら嬉しく思う。

今年は予想もしなかったような状況が続けて起こり、誰もが必然的に自身のアイデンティティや内面意識と向き合わざるを得ない場面が多かったように思う。

私はまず、文章が書けなくなった。ライターとして実績もないまま単身で渡独した2019年、私は運良く沢山の出会いのもと、密な取材や執筆に携わることが出来たと思っているが、それは私が外から取り入れた情報から断片的にかいつまんで書いた文章に過ぎず、自分の言葉で表現出来るほどのボキャブラリーが無かった。

しばらくして、私はソーシャルメディアやGoogleから学ぶことを一定期間辞めた。その結果、思うような文章が書けなくなった。

書いて、書いて、書きまくる。その努力が出来ていなかったことも事実ではあるが、それ以前に、自分の言葉の持つパワーが弱く、読む人の心に響くボールを投げ込むことが出来なかった。去年までの私だったら、書けなくなったことに悲観し、ライターとしての肩書きを名乗るまでもないと罵り、すっかり自信を無くしていただろう。「ああ、これが今の私なんだな。もっと頑張ろう」そんなマインドで年末を迎えることが出来るようになった自分を、今年は少しだけ許し、認めてあげようと思った。私は、ようやくスタートラインに立った。変なプライドや意地は今の私には勿論必要のないことで、封鎖された世界の中、私はベルリンという街でようやく自分の実力を知り、その上で新しい世界を経験し視野を広げることが出来るようになったと感じている。

MOLS – between dream and reality

2020年3月、私は初めて映像作品を制作することになり、自分のなかに渦巻く黒い部分や、他人に見せたことのない一面を放出することに集中した時期があった。それはとても苦しくて苦しくて、作品を作るということはこんなにも精神を削ることなのかと、改めてアーティストに対して尊敬の眼差しを送ったことを今でも思い返す。

あれから、私は文章を書くというアウトプット方法から一時的に視点を変えて、映像を撮ることや頭の中にあるものを視覚化することにシフトした。いつか本当に文章が全く書けなくなったとしても構わない。私が自由に表現出来る方法を探そうを思った。

結果、私の拙い文章力でも「取材して欲しい」と依頼されることや、過去の映像作品を気に入ってくださり新しいプロジェクトに参加させていただく機会が増え、もの書きではなく、ARI MATSUOKAとして声をかけてくださったことが多かったような気がする。

これまで、一生懸命”私”を生きるアーティストたちを目の前に、ライターとして、業務的ではなく、人として一生懸命相手の意思を汲み取ろう、理解しようと努力したことが相手にも伝わったのかなと思うととても嬉しい気持ちになる。

アートは生き方が全てであるように、文章も生き方が全てだと思う。これまで、私は”私”を生きることに一生懸命になれていなかった。そんな私がさまざまなアーティストの方と繋がり、真正面から向き合うことで自身の内側と外側が一体となっていく過程をリアルタイムで実感することが出来た。私の周りには、将来人格者になるであろう可能性に満ちた素晴らしい人が沢山いる。

今の私に最も必要なことは、文章を書くことでも、映像を撮ることでもなく、自身を見つめること。世界は停滞しているようで、実は物凄い早さで進化し続けている。世界はちゃんと循環しているんだ。私は私で、日々の出会いを大切に、1日1日逞しく生きる姿を、身近で大切に思ってくれている人に見せることが出来るようになれたらいいなと思う。

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